-
2018.02.06
2018年問題その1 労働契約法改正「無期労働契約への転換」とは
平成25年4月1日に改正労働契約法が施行され、無期転換ルールが規定されました。無期転換ルールとは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期労働契約に転換されるルールのことです。施行から5年を迎える平成30年4月以降、多くの有期契約労働者の方へ無期転換申込権の発生が見込まれています。無期転換ルールへの対応にあたっては、中長期的な人事労務管理の観点から、無期転換労働者の役割や責任の範囲、就業規則等の整備など、様々な検討が必要であり、まだ準備が進んでいない企業においては、早期に検討・対応が必要です。
■労働契約法の改正について
有期労働契約(※)の反復更新の下で生じる雇止めに対する不安を解消し、働く方が安心して働き続けることができるようにするため、労働契約法が改正され、有期労働契約の適正な利用のためのルールが整備されました。
※有期労働契約
1年契約、6か月契約など契約期間の定めのある労働契約のことをいいます。
有期労働契約であれば、パート、アルバイト、契約社員、嘱託など職場での呼称にかかわらず、対象となります。・無期転換ルールの概要
無期転換ルールは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、有期契約労働者(契約社員、パートタイマー、アルバイトなど)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。契約期間が1年の場合、5回目の更新後の1年間に、契約期間が3年の場合、1回目の更新後の3年間に無期転換の申込権が発生します。
有期契約労働者が使用者(企業)に対して無期転換の申込みをした場合、無期労働契約が成立します(使用者は断ることができません)。空白期間 有期労働契約とその次の有期労働契約の間に、契約がない期間が6か月以上あるときは、その空白期間より前の有期労働契約は通算契約期間に含めません。これをクーリングといいます。
上図の場合のほか、通算対象の契約期間が1年未満の場合は、その2分の1以上の空白期間があればそれ以前の有期労働契約は通算契約期間に含めません。・無期転換ルールの特例 有期雇用特別措置法により、
① 専門的知識等を有する有期雇用労働者(以下「高度専門職」といいます。)と、
② 定年に達した後引き続いて雇用される有期雇用労働者(以下「継続雇用の高齢者」といいます。)
について、その特性に応じた雇用管理に関する特別の措置が講じられる場合に、無期転換申込権発生までの期間に関する特例が適用されることとなりました。この特例は、都道府県労働局長の認定を受けることで、無期転換申込権が発生しないとするものです。(①の場合の期限の上限は10年)認定を受けるためには、本社を管轄する都道府県労働局に対し申請を行う必要があり、申請後、都道府県労働局において審査を行うため、申請から認定を受けるまでには一定期間を要します。また、審査の際に追加で資料提出が必要になる場合には、さらに時間がかかります。
現在、この特例に係る申請が全国的に増加しており、特に、管内に本社の多い東京、埼玉、千葉、神奈川、静岡、愛知、大阪、福岡労働局においては申請が急増していることから、認定を受けるまでには通常よりも時間がかかる場合があります。 このため、平成30年2月以降の申請については、認定が平成30年4月以降になる場合があるので、特例の適用をご希望で申請がまだの方は早急の申請が必要です。
この改正は2013年4月に施行されましたが、実質的に該当者が現れるのは施行から5年が経過する2018年4月以降になります。そのため、使用者、労働者ともに大きな転換の年となり、さまざまな問題も考えられることから「2018年問題」と呼ばれています。
詳しくは下記参照先をご覧ください。
参照ホームページ [ 有期契約労働者の無期転換ポータルサイト ] -
2018.02.06
2018年問題その2 労働者派遣法改正 3年ルールとは
平成27年9月11日に「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立しました。派遣労働という働き方、およびその利用は、臨時的・一時的なものであることを原則とするという考え方のもと、常用代替を防止するとともに、派遣労働者のより一層の雇用の安定、キャリアアップを図るため、労働者派遣法が改正されました。
改正派遣法では派遣社員の派遣期間の制限が見直され、派遣社員は個人単位で同一の組織単位で働けるのが3年までとなり、その最初の期限が2018年9月末となります。ただし例外がいくつかあり、派遣会社に無期雇用されている場合、期限は適用されません。
■派遣労働者の雇用の安定とキャリアアップ
・雇用安定措置の実施
同一の組織単位に継続して3年間派遣される見込みがある方には、派遣終了後の雇用継続のために、派遣元から以下の措置が講じられます。(派遣元の義務)
(1年以上3年未満の見込みの方については、努力義務がかかります。)
雇用安定措置
①派遣先への直接雇用の依頼
※雇用安定措置として①を講じた場合で、直接雇用に至らなかった場合は、別途②~④
の措置を講じる必要があります。
②新たな派遣先の提供(合理的なものに限る)
③派遣元での(派遣労働者以外としての)無期雇用
④その他安定した雇用の継続を図るための措置・キャリアアップ措置の実施
すべての派遣労働者は、キャリアアップを図るために、派遣元から
・段階的かつ体系的な教育訓練
・キャリア・コンサルティング(希望する場合)
を受けられます。(派遣元の義務)
特に、無期雇用派遣労働者に対しては、長期的なキャリア形成を視野に入れた教育訓練を実施することが派遣元に義務付けられます。・均衡待遇の推進
派遣労働者が求めた場合、派遣元から、以下の点について、派遣労働者と派遣先で同種の業務に従事する労働者の待遇の均衡を図るために考慮した内容の説明が受けられます。(派遣元の義務)
①賃金の決定
②教育訓練の実施
③福利厚生の実施・雇入れ努力義務/募集情報提供義務
派遣先が、派遣労働者を受け入れていた組織単位(※)に、派遣終了後、新たに労働者を雇い入れる際、一定の場合には、その派遣労働者を雇い入れるよう努めなければならないこととなります。
また、派遣先は、正社員やその他の労働者の募集を行う際、一定の場合には、受け入れている派遣労働者に対しても、その募集情報を周知しなければならないこととなります。■期間制限のルールが変わります
現在の期間制限(いわゆる26業務以外の業務に対する労働者派遣について、派遣期間の上限を原則1年(最長3年)とするもの)を見直します。
施行日以後に締結/更新される労働者派遣契約では、すべての業務に対して、派遣期間に次の2種類の制限が適用されます。
経過措置:施行日時点ですでに締結されている労働者派遣契約については、その労働者派遣契約が終了するまで、改正前の法律の期間制限が適用されます。
○以下の方は、例外として期間制限の対象外となります。
・派遣元で無期雇用されている派遣労働者・60歳以上の派遣労働者など詳しくは下記参照先をご覧ください。
参照ホームページ [ 厚生労働省 ]
(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386.html) -
2018.01.24
平成30年度雇用保険料率の告示案要綱を了承 ~平成29年度の料率を据え置き~
厚生労働省から平成30年1月12日「平成30年度雇用保険料率の告示案要綱を了承~平成29年度の料率を据え置き~」というお知らせが公表されました。
雇用保険率については、法律に定められた率を、毎年度、積立金の状況などを勘案して弾力的に変更することとされています。そして、変更された雇用保険率(実際に適用される雇用保険率)を告示することとされています。
この度、平成30年度の雇用保険料率を定める告示案について、厚生労働大臣が労働政策審議会に諮問し、同審議会が妥当と答申しました。
この答申を踏まえ、平成30年度の雇用保険料率は、平成29年度の料率を据え置き、一般の事業で0.9%、農林水産・清酒製造の事業で1.1%、建設の事業で1.2%とし、平成30年4月1日から適用するとのことです。
詳しくは下記参照先をご覧ください。
参照ホームページ [ 厚生労働省 ]
(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000190648.html) -
2018.01.16
労災保険料算出に用いる労災保険率の改定(平成30年4月1日施行予定)
事業主が支払う労災保険料算出に用いる労災保険率の改定などを主な内容とする省令案要綱(「労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令案要綱」)が、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会で「妥当」となり、平成30年4月1日の施行を目指して省令改正作業が進められています。
労災保険率は、厚生労働大臣が業種ごとに定めており、それぞれの業種の過去3年間の災害発生状況などを考慮し、原則3年ごとに改定されています。
省令改正案のポイントは下記5点です。1 平成30年4月から適用される新たな労災保険率(54業種)を設定
全業種の平均料率は 4.5/1,000になります。 (平成27年度改正時の平均料率は4.7/1000)
※労災保険料 = 全従業員の年度内の賃金総額 ×労災保険料率2 社会復帰促進等事業等に必要な費用の限度額の割合を118分の18から120分の20に引き上げ
3 家事支援業務に従事する方を労災保険の特別加入制度の対象に追加
仕事と家庭の両立支援、女性の活躍を促進する中で、家事、育児等の支援サービスの需要が増大するものと考えられるため、家事支援従事者の就労条件を整備する必要がある等の状況を踏まえ、家事支援従事者が特別加入制度(特定作業従事者)の加入対象となります。4 時間外労働の上限規制等の円滑な移行のため、中小企業事業主に対して、助成金の内容を拡充
大きく分けると下記3つのコースがあります。
① 時間外労働上限設定コース(時間外労働の上限設定を行う中小企業事業主に対し助成)
② 勤務間インターバル導入コース(新規に9時間以上の勤務間インターバルを導入する中小企業事業主に対し助成)
③ 職場意識改善コース(年次有給休暇の取得促進、所定外労働の削減等を推進する中小企業事業主に対し助成)
また、就業規則等の作成・変更費用、研修費用(業務研修を含む)等労働時間短縮や生産性向上に向けた取組に必要な経費は、3コース共通で助成金の対象となります。
その他、3社以上の中小企業の事業主団体において、傘下企業の時間外労働の上限規制への対応に向けた取組に要した費用が新たに助成金の対象となります。5 「労働者災害補償保険法」に基づく介護(補償)給付と、「炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法」に基づく介護料の最高限度額及び最低保障額の改定
労働者災害補償保険法に基づく介護(補償)給付の最高限度額が、常時介護を要する者は105,290円(現行105,130円)、随時介護を要する者は52,650円(現行52,570円)になります。最低保証額は、常時介護を要する者が57,190円(現行57,110円)、随時介護を要する者は28,600円(現行28,560円)になります。
炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法に基づく介護料の最高限度額と最低保証額についても見直しがされました。詳しくは下記参照先をご覧ください。
参照ホームページ [ 厚生労働省 ]
(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000188909.html) -
2018.01.16
柔軟な働き方に関する検討会の資料を公表 副業・兼業などのガイドラインの案を示す
厚生労働省から、平成29年11月20日に開催された「第4回柔軟な働き方に関する検討会」の資料が公表されました。今回の議事は、「雇用型テレワーク、自営型(非雇用型)テレワーク、副業・兼業のガイドライン案等について」という内容で、次のようなガイドラインの案などが示されています。
●情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン(案)
●自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン(案)
●副業・兼業の推進に関するガイドライン骨子(案)特に注目されているのは、「副業・兼業」です。
副業・兼業については、厚生労働省のモデル就業規則の改定の方向性も示されており、労働者の遵守事項における副業・兼業に関する規定(「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」)を削除の上で、次のような条項を置く案が紹介されています。・労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
・労働者は、上記の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。■副業・兼業の現状
(1)副業・兼業を希望する者は年々増加傾向にある。副業・兼業を行う理由は、自分がやりたい仕事であること、スキルアップ、資格の活用、十分な収入確保等さまざまであり、また、副業・兼業の形態も、正社員、パート・アルバイト、自営業等さまざまである。(2)多くの企業では、副業・兼業を認めていない。企業が副業・兼業を認めるにあたっての課題・懸念としては、自社での業務がおろそかになること、情報漏洩のリスクがあること、競業・利益相反になることなどが挙げられる。また、副業・兼業に係る就業時間や健康管理の取扱いのルールが分かりにくいとの意見がある。
(3)副業・兼業自体への法的な規制はないが、厚生労働省が示しているモデル就業規則では、労働者の遵守事項に「許可なく他の会社等の業務に従事しいこと」いう規定がある。
(4)裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、それが労務提供上の支障となる場合、企業秘密が漏洩するなど企業秩序に影響が生じる場合、信頼関係を破壊する行為がある場合、競業に当たる場合とされている。
なお、副業・兼業時の就業時間の把握については、ガイドラインの骨子案において、「企業が労働者の自己申告に基づいて就業時間を把握し、長時間労働の抑制や健康管理に努める」といった方向性が示されています。
副業・兼業のモデル就業規則の改定の方向性などについては、報道機関も積極的に取り上げており、『検討会から意見を求められた有識者委員から、「企業が労働時間を管理することは不可能だ」などと、ガイドラインの骨子案の問題を指摘する意見が続出しており、労働者の安全確保で、本業と副業のどちらの企業が責任を負うかなど、現在の労働法制では不明瞭な点が多いとの声もあった』などと報じられています。
政府は、人手不足の対応や働き方改革の切り札として、テレワークや副業・兼業を推進したい構えですが、各企業の現場からみれば、いずれも管理が難しい制度で簡単に導入できるものではなさそうです。
詳しくは下記参照先をご覧ください。参照ホームページ [ 厚生労働省 ](http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000185391.html)