投稿日時:2023年09月28日
厚生労働省では「心理的負荷による精神障害の認定基準」を改正し、9月1日付で厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長宛てに通知しました。この改正は、近年の社会情勢の変化等に鑑み、最新の医学的知見を踏まえて「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」において検討を行い、令和5年7月に報告書が取りまとめられたことを受けたものです。厚生労働省では、業務により精神障害を発病された方に対して、改正後の本基準に基づき、一層迅速・適正な労災補償を行っていくとしています。
【改正の背景】
精神障害・自殺事案については、2011平成23年に策定された「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に基づき労災認定を行ってきた。このたび、近年の社会情勢の変化や労災請求件数の増加等に鑑み、最新の医学的知見を踏まえて「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」において検討を行い、2023令和5年7月に報告書が取りまとめられたことを受け、認定基準の改正を行った。
【認定基準改正のポイント】
●業務による心理的負荷評価表※の見直し
【追加】・具体的出来事として、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)を追加
【追加】・具体的出来事として、「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」を追加
・心理的負荷の強度が、「強」、「中」、「弱」となる具体例を拡充
→パワーハラスメントの6類型すべての具体例、性的指向・性自認に関する精神的攻撃等を含むことを明記
→一部の心理的負荷の強度しか具体例が示されていなかった具体的出来事について、他の強度の具体例を明記
※実際に発生した業務による出来事を、同表に示す「具体的出来事」に当てはめ負荷(ストレス)の強さを評価
カスタマーハラスメントについては、下記マニュアルをご参照ください。
厚生労働省:カスタマーハラスメント対策企業マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf
【パワーハラスメントの6類型】

●精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し
(改正前)
悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」(特に強い心理的負荷となる出来事)がなければ業務起因性を認めていない
(改正後)
悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」により悪化したときには、悪化した部分について業務起因性を認める
●医学意見の収集方法を効率化
(改正前)
専門医3名の合議による意見収集が必須な事案
【例:自殺事案、「強」かどうか不明な事案】
(改正後)
特に困難なものを除き専門医1名の意見で決定できるよう変更
投稿日時:2023年09月06日
厚生労働省は、都道府県労働局に設置されている地方最低賃金審議会が答申した令和5年度の地域別最低賃金の改定額(以下「改定額」)を取りまとめました。改定額及び発効予定年月日は下記のとおりです。
これは、7月28日に厚生労働大臣の諮問機関である中央最低賃金審議会が示した「令和5年度地域別最低賃金額改定の目安について」などを参考として、各地方最低賃金審議会が調査・審議して答申した結果を取りまとめたものです。
答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、10月1日から10月中旬までの間に順次発効される予定です。
令和5年度 地方最低賃金審議会の答申のポイント
47都道府県で、39円~47円の引上げ(引上げ額が47円は2県、46円は2県、45円は4県、44円は5県、43円は2県、42円は4県、41円は10都府県、40円は17道府県、39円は1県)
改定額の全国加重平均額は1,004円(昨年度961円)※
※昨年度との差額43円には、全国加重平均額の算定に用いる労働者数の更新による影響分(1円)が含まれている
(下記の※3参照)
全国加重平均額43円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額
最高額(1,113円)に対する最低額(893円)の比率は、80.2%(昨年度は79.6%。なお、この比率は9年連続の改善)

投稿日時:2023年09月06日
厚生労働省では、労働安全衛生法に基づく一般定期健康診断の実施、その結果についての医師の意見聴取及びその意見を踏まえた就業上の措置の実施について、事業者の皆様に改めて徹底してもらうことを促すため、毎年9月を「職場の健康診断実施強化月間」と位置付け、集中的・重点的に啓発を行っています。
この度、令和5年9月の強化月間のお知らせがありました。今回の強化月間の重点事項は、「健康診断及び事後措置の実施の徹底」、「医療保険者との連携」などです。
事業者の皆様に向けて、その内容を紹介するリーフレットなどが公表されていますので、ご確認いただくことをお勧めいたします。
■1健康診断及び事後措置の実施の徹底
健康診断の実施、有所見者に対する医師からの意見聴取、医師の意見を勘案した必要な事後措置の実施は、全て労働安全衛生法に基づく事業者の義務です。
特に小規模事業場での実施率が低くなっています。事業場の規模にかかわらず、労働者の健康管理を適切に講ずるため、事後措置の実施まで徹底してください。

○有所見者に対する医師からの意見聴取を徹底しましょう。
○事後措置は、医師の意見を勘案し、必要があると認めるときに、労働者の実情を考慮して、必要な措置(就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等)を実施しましょう。
○事後措置を講ずるに当たっては「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」をご確認ください。
<地域産業保健センターのご案内>
地域産業保健センターでは、労働者数50人未満の小規模事業場への支援として、産業医・保健師を配置し、健診結果についての医師からの意見聴取、長時間労働者・高ストレス者に対する面接指導、産業医等の事業場訪問による保健指導、労働者の健康に係る各種相談などの対応をしていますので、ぜひご活用ください。
■2医療保険者との連携
医療保険者(※1)から健康診断の結果を求められた際の提供にご協力ください。
○保険者は、高齢者医療確保法に基づき特定健康診査・特定保健指導を、健康保険法に基づき保健事業を実施し、労働者の予防・健康づくりに取り組んでいます。
○制度間の健診の重複を避け、これらの取組が着実に進められるよう、保険者から労働者の健康診断結果を求められた場合は、その写しを提供することが事業者に義務づけられていますので、健康診断結果の提供への協力をよろしくお願いします。
※法律に基づく提供の場合は、第三者提供に係る本人同意は不要です。
○厚生労働省では、コラボヘルス(※2)等の労働者の健康保持増進のための取組に要した費用に対し、エイジフレンドリー補助金で一部補助を行っています。積極的にご活用ください。
※1:協会けんぽ、健保組合、市町村国保、国保組合、共済組合等を指します。
※2:医療保険者と事業者が積極的に連携し、明確な役割分担と良好な職場環境のもと、労働者の予防・健康づくりを効果的・効率的に実行すること。
投稿日時:2023年08月24日
裁量労働制について、「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令(令和5年厚生労働省令第39号)」及び「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針及び労働基準法施行規則第24条の2の2第2項第6号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務の一部を改正する告示(令和5年厚生労働省告示第115号)」により改正が行われました。
これらの改正省令及び改正告示は、令和6年4月1日から施行・適用されます。この改正について、厚生労働省から、Q&Aが公表されました。施行・適用は少し先ですが、裁量労働制を導入している場合(導入をお考えの場合)には、早めに確認しておくことをお勧めいたします。
一部を抜粋してご紹介いたします。
■令和5年改正労働基準法施行規則等に係る裁量労働制に関するQ&A
【同意及び同意の撤回(専門型・企画型】
〔Q〕
専門型・企画型において、使用者が明示した上で説明して労働者の同意を得ることを労使協定又は決議で定めることが適当であることに留意することが必要とされている事項のうち、「制度の概要」にみなし労働時間は含まれるか。
〔A〕
含まれる。使用者は、労使協定又は労使委員会で決議を行ったみなし労働時間の時間数のみならず、実際の労働時間数にかかわらずみなし労働時間の時間数労働したものとみなされることを明示した上で、説明を行うことが考えられる。
〔Q〕
専門型・企画型の適用に当たり、労働者の同意が自由な意思に基づいてされたものとは認められない場合には、労働時間のみなしの効果は認められないとされているが、「自由な意思に基づいてされたものとは認められない場合」とは具体的にどのような場合か。
〔A〕
個別具体的に判断する必要があるが、裁量労働制導入後の処遇等について説明することが求められており、例えば、労働者に対して、同意した場合に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容並びに同意しなかった場合の配置及び処遇について、同意に先立ち、誤った説明を行ったことなどにより、労働者が専門型又は企画型の適用の是非について検討や判断が適切にできないままに同意に至った場合などは、自由な意思に基づいてされたものとは認められないものと考えられる。
〔Q〕
専門型・企画型において、労使協定又は決議事項として「同意の撤回に関する手続」が設けられたが、労使協定又は決議において同意の撤回は認めない旨を定めることはできるか。
〔A〕
できない。同意の撤回に関する手続は、同意の撤回が可能であることを前提として定める必要がある。
【みなし労働時間と処遇の確保(専門型・企画型)】
〔Q〕
専門型・企画型において、裁量労働制を導入する際の労使委員会における調査審議又は労使での協議において、労働者の賃金水準を示すことが望ましいとされているが、具体的にどのように示せばよいのか。
〔A〕
専門型又は企画型の適用対象となる労働者の範囲や、当該労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度について検討を行い、相応の処遇を確保することに資するような内容を示すことが考えられ、裁量労働制の適用を予定している労働者が属する層の賃金水準が分かる資料を労使協定の当事者となる労働者の過半数で組織する労働組合等又は労使委員会に示すことが望ましい。
〔Q〕
専門型・企画型において、「相応の処遇」とは具体的にどのようなものか。
〔A〕
「相応の処遇」については、労使協定の当事者となる労働者の過半数で組織する労働組合等や労使委員会が個別具体的に事業場の状況を踏まえて判断する必要があるが、通常の労働時間制度ではなく、裁量労働制というみなし労働時間制を適用するのにふさわしい処遇が確保されていることが必要である。
また、使用者は、適用対象となり得る労働者の範囲について定めるに当たり、当該者が対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者であるかの判断に資するよう、労使協定の当事者となる労働者の過半数で組織する労働組合等又は労使委員会に対し、当該事業場の属する企業等における労働者の賃金水準(労働者への賃金・手当の支給状況を含む。)を示すことが望ましいことに留意すること。
また、適用対象の労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の運用状況(適用対象の労働者への賃金・手当の支給状況や評価結果等をいう。)を開示することが適当とされていることを踏まえ、労使協定の当事者となる労働者の過半数で組織する労働組合等又は労使委員会は、ふさわしい処遇が確保されていることを把握し、制度の趣旨に沿ったものとなっているかを確認することが必要である。
【健康・福祉確保措置(専門型・企画型】
〔Q〕
専門型・企画型において、労働時間の状況の把握方法は「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切なもの」であることが必要とされているが、「その他の適切なもの」として、労働者の自己申告による把握を行うことは可能か。
〔A〕
原則として認められず、やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合において認められる。法第38条の3第1項第4号及び第38条の4第1項第4号に規定する「労働時間の状況」の概念及びその把握方法は、安衛法第66条の8の3により把握することが義務付けられている「労働時間の状況」と同一のものであるため、「その他の適切なもの」として、やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合においては、労働者の自己申告による把握が考えられる。
〔Q〕
専門型・企画型における労働時間の状況の把握方法について、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」として労働者の自己申告による把握が可能な場合とはどのような場合か。
〔A〕
「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」としては、例えば、労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合など、事業者の現認を含め、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合があり、この場合に該当するかは、当該労働者の働き方の実態や法の趣旨を踏まえ、適切な方法を個別に判断すること。
ただし、労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合などにおいても、例えば、事業場外から社内システムにアクセスすることが可能であり、客観的な方法による労働時間の状況を把握できる場合もあるため、直行又は直帰であることのみを理由として、自己申告により労働時間の状況を把握することは、認められない。
また、タイムカードによる出退勤時刻や入退室時刻の記録やパーソナルコンピュータの使用時間の記録などのデータを有する場合や事業者の現認により当該労働者の労働時間を把握できる場合にもかかわらず、自己申告による把握のみにより把握することは認められない。
〔Q〕
専門型・企画型において、健康・福祉確保措置として、設定する勤務間インターバル(終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること)の時間や、設定する深夜業の回数制限(法第37条第4項に規定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について一定回数以内とすること)として具体的にどのような基準を設定することが適切か。
〔A〕
設定する回数や時間については、人員体制や業務の負荷等の個別の事情に鑑み、労使で協議の上、設定する必要があることに留意する必要があるが、例えば、高度プロフェッショナル制度において、勤務間インターバルの時間については11時間以上、深夜業の回数については1箇月当たり4回以内と示されていることを参考にした上で、設定することが考えられる。
【労使委員会(企画型)】
〔Q〕
労使委員会の運営規程に記載が求められている「対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容の使用者からの説明に関する事項」や「制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項」については、具体的にどのような項目を記載することが考えられるのか。
〔A〕
運営規程における「対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容の使用者からの説明に関する事項」については、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容について労使委員会に対して説明を行う事項及び労使委員会に対する説明を決議の前に行うことについて定めておく必要がある。
例えば、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度のうち、人事評価の決定方法及び当該評価と連動した裁量労働制の特別手当や基本給等の設定について、決議を行うための初回の調査審議において労使委員会に対して説明を行うこと等を定めることが考えられる。
運営規程における「制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項」については、企画型の実施状況の把握の頻度及び方法について定めておく必要がある。
例えば、実施状況の把握の方法として、
・企画型の対象労働者の賃金水準や制度適用に係る特別手当の実際の支給状況、評価結果等に関する分布を労使委員会に開示、又は
・企画型の対象労働者に対して人事部が実施する社内サーベイにおいて業務量や業務における裁量の程度等を調査した結果などを労使委員会が参照し、その内容を調査審議するために労使委員会を開催することを定め、それらの頻度として6箇月以内ごとに1回等とすることをあらかじめ運営規程に定めておくことが考えられる。
投稿日時:2023年08月24日
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構より、障害者雇用納付金制度の改正の概要について、お知らせがありました。改正の概要をまとめたページが設けられていますが、特に、令和6年4月1日施行関係は、確認のうえ、準備を進めておきましょう。
令和6年4月1日施行関係の改正は、次のようなものがあります。
1.障害者の法定雇用率の引上げ
障害者の法定雇用率が、現行の2.3%から2.5%に引き上げられます。
2.特定短時間労働者の実雇用率への算定
週所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者について、雇用率上、1人をもって0.5カウントできるようになります。
3.特例給付金の廃止
上記2の開始に伴い、週所定労働時間10時間以上20時間未満の障害者を対象とした特例給付金が廃止されます。
なお、令和6年3月31日までに雇入れられた週所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度以外の身体障害者及び知的障害者については、1年間の経過措置があります。
4.一定数を超えて障害者を雇用する場合の超過人数分の調整金及び報奨金の支給額の調整
調整金について、支給対象人数が10人を超える場合には、当該超過人数分への支給額が1人当たり23,000円(本来の額から6,000円を調整)となります。
報奨金について、支給対象人数が35人を超える場合には、当該超過人数分への支給額が1人当たり16,000円(本来の額から5,000円を調整)となります。
令和7年4月1日施行関係の改正は、次のようなものがあります。
1.除外率の引き下げ
除外率が、除外率設定業種ごとにそれぞれ10ポイント引き下げられ、以下のように変わります。
(現在除外率が10%以下の業種については除外率制度の対象外となります。)

令和8年4月1日施行関係の改正は、次のようなものがあります。
1.障害者の法定雇用率の引上げ
障害者の法定雇用率が、2.5%から2.7%に引き上げられます。
法改正に関する厚生労働省のホームページはこちら
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00019.html
制度改正に伴う申告申請書の作成方法などの具体的な手続についてはホームページでお知らせします。
なお、令和5年4月1日施行関係(令和6年度申告申請分)に関しては令和5年12月下旬を目途にお知らせする予定です。