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2018.09.14
平成30年9月30日で労働者派遣法の改正から3年が経過 ~再確認願います~
平成27年の労働者派遣法の改正から、平成30年9月30日で3年が経過します。平成27年の改正では、一部例外を除いて全ての業種で派遣される期間制限が原則3年に定められました。また、労働者派遣事業は許可制へ一本化され、平成30年9月30日以降、許可を受けていない(旧)特定労働者派遣事業を行う事業主から派遣労働者を継続して受け入れると、法違反となります。
厚生労働省は、施行後3年を迎えるに当たり、受入れ期間制限ルールや、無許可の事業主からの労働者派遣の受入れ禁止などをパンフレットにまとめ、派遣先の方に改めて確認するよう促しています。1. 受入れ期間制限ルール
【対象】平成27年9月30日以降に締結・更新された労働者派遣契約に基づく労働者派遣
【内容】すべての業務において、(1)事業所単位、かつ(2)個人単位の期間制限が適用されます。
※ ただし、「派遣元で無期雇用されている派遣労働者」や「60歳以上の派遣労働者」などは、期間制限の対象外です。
(1)派遣先の 「事業所単位」 の期間制限
派遣先は、同一の事業所において派遣可能期間(3年)を超えて派遣を受け入れることはできません。
ただし、派遣先の事業所の過半数労働組合等※1から意見を聴いた上であれば、3年を限度として派遣可能期間を延長※2することができます。
※1 過半数労働組合が存在しない場合、派遣先の事業所の労働者の過半数を代表する者
※2 再延長する場合には、改めて意見聴取手続きが必要です。
(2)派遣労働者の 「個人単位」 の期間制限
(1)において「事業所単位」の派遣可能期間を延長した場合でも、派遣先の事業所における同一の組織単位(いわゆる「課」などを想定)で、3年を超えて同一の派遣労働者を受け入れることはできません。<事業所・組織単位の定義>
以下の観点から、実態に即して個別に判断されます。ご不明な点は、お近くの労働局までご相談ください。●事業所(雇用保険の適用事業所に関する考え方と基本的に同じです。)
・ 工場、事務所、店舗等場所的に独立していること
・ 経営単位として人事・経理・指導監督・働き方などがある程度独立していること
・ 施設として一定期間継続するものであること
●組織単位(いわゆる「課」や「グループ」など)
・ 業務としての類似性、関連性があるもの
・ 組織の長が業務配分、労務管理上の指揮監督権限を有するもの<意見聴取手続>
派遣先は、同一の事業所において3年を超えて派遣を受け入れようとする場合は、延長しようとする派遣可能期間が終了する1か月前までに、事業所の過半数労働組合等から意見を聴く必要があります。
●意見聴取方法
(1)過半数労働組合等に対して、書面による通知※ を行わなければなりません。
※ 通知の内容は「派遣可能期間を延長しようとする事業所」および「延長しようとする期間」です。
あわせて、その事業所ごとの業務について、派遣受入れの開始時からその業務に従事した
派遣労働者の数や派遣先の無期雇用労働者の数の推移等の参考となる資料を提供する必要があります。
(2)過半数労働組合等から異議が述べられた場合、派遣先は、延長前の派遣可能期間が経過する前に、
派遣可能期間の延長の理由と延長の期間、当該異議への対応方針を説明しなければなりません。2. 無許可派遣を行う事業主からの受入れ禁止
平成27年労働者派遣法の改正により、労働者派遣事業は許可制へ一本化されました。
改正前から届出による特定労働者派遣事業(以下「(旧)特定労働者派遣事業」という。)を行っていた事業主が、経過措置として派遣事業を引き続き行える期限は、原則、平成30年9月29日までです。
平成30年9月30日以降、許可を受けていない※1(旧)特定労働者派遣事業を行う事業主から、派遣労働者を継続して受け入れると、法違反※2となります。
労働局からの指導の対象となるほか、事業主名の公表等の対象となることもあり、また、労働契約申込みみなし制度(3参照)の対象となる可能性がありますのでご留意ください。
※1 平成30年9月29日までに許可の申請がなされた場合、その申請について許可又は不許可の処分がある日までの間は、引き続き(旧)特定労働者派遣事業を行うことができます。
※2 労働者派遣法第24条の2で、無許可の事業主からの派遣受入れを禁止しています。<派遣元事業主の許可取得・申請状況を確認してください!>
平成30年9月30日以降に派遣を受け入れる際には、「許可を取得した派遣元事業主」又は「許可申請中の(旧)特定労働者派遣事業を行う事業主」であることを、必ず確認してください。
★ 派遣元事業主には固有の許可番号又は届出番号があります。
※許可番号又は届出番号は、人材サービス総合サイト(https://www.jinzai-sougou.go.jp/)で検索できるほか、
労働者派遣契約書等に記載されている場合があります。
※この番号が「特**-******」(「特」から始まる2桁-6桁の数字)である事業主は、(旧)特定労働者派遣事業を行う事業主であり、まだ許可を取得していない、または、許可を申請していない可能性があります。
(旧)特定労働者派遣事業を行う事業主が許可を取得・申請しない場合、派遣契約を継続できず、派遣先が、現在受け入れている派遣労働者を直接雇用する、新たな派遣元から派遣労働者を確保する等の対応をする必要が生じます。3. 労働契約申込みみなし制度
違法な労働者派遣を受け入れた場合、派遣先が、その派遣労働者に対して労働契約の申込みをしたとみなされる場合があります。
平成27年10月1日以降、派遣先が次に掲げる違法な労働者派遣を受け入れた場合※ 、その時点で、派遣先が派遣労働者に対して、その派遣労働者の派遣元における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みを
したものとみなされます。
※派遣先が違法派遣に該当することを知らず、かつ、知らなかったことに過失がなかったときを除きます。<労働契約申込みみなし制度の対象となる違法派遣>
(1)労働者派遣の禁止業務に従事させた場合
(2)無許可の事業主から労働者派遣を受け入れた場合
(3)期間制限に違反して労働者派遣を受け入れた場合
(4)労働者派遣法等の規定の適用を免れる目的で行われるいわゆる偽装請負の場合4. 派遣労働者への募集情報の提供
派遣先において、派遣労働者に対し、募集情報を提供することが義務付けられています。
●通常の労働者(いわゆる正社員)を募集する場合
派遣先の事業所で正社員を募集する場合、その事業所に継続して1年以上受け入れている派遣労働者がいる場合には、その派遣労働者に対して、正社員として就職する機会が得られるよう、募集情報を周知しなければなりません。
●労働者を募集する場合
派遣先の事業所で正社員に限らず労働者を募集する場合、派遣先の同一の組織単位の業務に継続して3年間受け入れる見込みがある派遣労働者がいる場合であって、雇用安定措置(「5.雇用安定措置への対応」参照)として、派遣元からこの派遣労働者に係る直接雇用の依頼があった場合には、その派遣労働者に対して、直接雇用で就職する機会が得られるよう、募集情報を周知しなければなりません。5. 雇用安定措置への対応
雇用安定措置(派遣労働者の派遣終了後の雇用を継続させるための措置※ )として、派遣元から、同一の業務に1年以上継続して従事する派遣労働者の直接雇用の依頼を受けた場合であって、その派遣終了後に引き続き同一の
業務に従事させるために労働者を雇用する場合には、受け入れていた派遣労働者を雇用するよう努めなければなりません。
また、このような場合以外でも、雇用安定措置として直接雇用の依頼を受けた場合には、派遣労働者の能力評価を踏まえ、直接雇用に向けて真摯な検討を行うなど、本人の希望に沿った適切な対応が求められます。
※ 派遣元には、雇用する派遣労働者が、同一の組織単位に継続して3年派遣される見込みがあり、かつ派遣労働者が派遣終了後の継続就業を希望するときは、派遣先に対する直接雇用の依頼等を講じる義務が課されます(1年以上3年未満の派遣見込みの場合は努力義務)。平成27年労働者派遣法改正法の詳細は、以下をご覧ください。
○平成27年労働者派遣法改正法の概要
○平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A など
※ 厚生労働省のHPに、平成27年労働者派遣法改正法に関する資料が掲載されています。
詳しくは下記参照先をご覧ください。
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2018.09.14
年次有給休暇、勤務間インターバルについて
働き方改革関連法(「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」)が平成30年7月6日に公布されました。働き方改革の大きなテーマの長時間労働の是正に向けて、年次有給休暇の取得義務や、勤務間インターバル制度(努力義務)が平成31年4月1日から施行されます。
■年次有給休暇の確実な取得
10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならない。
使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者に対し、毎年5日、時季を指定して有給休暇を与える必要があります(労働者の時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については指定の必要はありません)。
・基準日を法定の基準より前の日から設定する場合、厚生労働省令でいつまでに時季を定めて取得させなければならないか定められます。
<働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案に対する附帯決議 平成30年6月28日>
使用者は、時季指定を行うに当たっては、年休権を有する労働者から時季に関する意見を聴くこと、その際には時季に関する労働者の意思を尊重し、不当に権利を制限しないことを省令に規定すること。また、労働基準監督署は、違反に対して適切に監督指導を行うこと。
■助成金について
厚生労働省は、週労働時間60時間以上の雇用者の割合5%、年次有給休暇年次有給休暇取得率70%の達成(平成32年目標)を目指し、「時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)」を設けています。平成30年度から、年次有給休暇を取得促進した場合、上限額を最大150万円までに引上げられるなど、助成内容の拡充がされています。【支給対象となる事業主】
労働者災害補償保険の適用事業主であり、次のいずれかに該当する事業主であること
(1) 雇用する労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数が13日以下であり、かつ月間平均所定外労働時間が10時間以上であり、労働時間等の設定の改善に積極的に取組む意欲がある中小企業事業主(※1)
(2) 労働基準法の特例として法定労働時間が週44時間とされており(特例措置対象事業場(※2))、かつ、所定労働時間が週40時間を超え週44時間以下の事業場を有する中小企業事業主(※1)
【支給対象となる取組~いずれか1つ以上を実施~】
(1) 労務管理担当者に対する研修(※3)
(2) 労働者に対する研修(※3)、周知・啓発
(3) 外部専門家によるコンサルティング
(4) 就業規則・労使協定等の作成・変更
(5) 人材確保に向けた取組
(6) 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新
(7) テレワーク用通信機器の導入・更新(※4)
(8) 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(※4)
(※3) 研修には、業務研修も含みます。
(※4)原則として、パソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。【成果目標】
支給対象となる取組は、以下の「成果目標」の達成を目指して実施。
【対象事業主(1)に該当する場合】
ア年次有給休暇の取得促進
労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数を4日以上増加させる
イ所定外労働の削減
労働者の月間平均所定外労働時間数を5時間以上削減させる
【対象事業主(2)に該当する場合】
所定労働時間の短縮
事業主が事業実施計画において指定した全ての事業場において、週所定労働時間を2時間以上短縮して、40時間以下とする【支給額】
取組の実施に要した経費の一部が、成果目標の達成状況に応じて支給されます。
以下のどちらか低い方の額
(1) 対象経費の合計額×補助率(※)
(2) 1企業当たりの上限額
(※)常時使用する労働者数が30名以下かつ、支給対象の取組で6から10を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5。
【参照 厚生労働省:「時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisiki.html■勤務間インターバル制度の普及促進
事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定の休息の確保に努めなければならない。
「勤務間インターバル」とは、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図るものです。事業主には、「就業から始業までの時間の設定」をすることについての努力義務が課せられました。
・企業全体を通じて一の労働時間等設定改善企業委員会の決議をもって、年次有給休暇の計画的付与等に係る労使協定に代えることができることとする。
・事業主の責務として、短納期発注や発注の内容の頻繁な変更を行わないよう配慮するよう努めるものとする。
(努力義務・衆議院において修正)。■助成金について
労働時間等の設定の改善を図り、過重労働の防止及び長時間労働の抑制に向け勤務間インターバルの導入に取り組んだ企業に対する助成金が設けられています。【支給対象となる事業主】
労働者災害補償保険の適用事業主であり、次の(1)から(3)のいずれかに該当する事業場を有する中小企業事業主(※時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)における中小企業事業主の範囲と同様)であること
(1) 勤務間インターバルを導入していない事業場
(2) 既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場
(3) 既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場【支給対象となる取組】
※時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)における対象と同様【成果目標】
支給対象となる取組は、以下の「成果目標」の達成を目指して実施。 ●新規導入【対象事業主が(1)に該当する場合】
新規に所属労働者の半数を超える労働者を対象とする勤務間インターバルを導入すること。
●適用範囲の拡大【対象事業主が(2)に該当する場合】
対象労働者の範囲を拡大し、所属労働者の半数を超える労働者を対象とすること
●時間延長【対象事業主が(3)に該当する場合】
所属労働者の半数を超える労働者を対象として、休息時間数を2時間以上延長して、9時間以上とすること。【支給額】
「成果目標」を達成した場合に、支給対象となる取組の実施に要した経費の一部を支給します。補助率と上限額については、「新規導入」に該当するものがある場合は表1により、「適用範囲の拡大」又は「時間延長」のみの場合は表2により、最も短い休息時間数に応じたものになります。
【出典:厚生労働省:「時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)のご案内」より】
(※4)事業実施計画で指定した事業場に導入する勤務間インターバルの休息時間数のうち最も短いものを指します。
(※5)常時使用する労働者数が30名以下かつ、支給対象の取組で(6)から(8)を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5となります。【事業実施期間】
事業実施期間中(交付決定の日から平成31年2月1日まで)に取組を実施【締め切り】
申請の受付:平成30年12月3日まで(必着)
(なお、支給対象事業主数は国の予算額に制約されるため、12月3日以前に受付を締め切る場合があります。)【参照 厚生労働省:時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150891.html
詳しくは下記参照先をご覧ください。
- 参照ホームページ [ 厚生労働省 ]
- https://www.mhlw.go.jp/content/000332869.pdf
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2018.09.14
長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表
厚生労働省では、平成29年度に長時間労働が疑われる25,676事業場に対して実施した、労働基準監督署による監督指導の結果を取りまとめ公表しています。
この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象としています。
対象となった25,676事業場のうち、11,592事業場(45.1%)で違法な時間外労働を確認したため、是正・改善に向けた指導を行っています。なお、このうち実際に1か月当たり80時間を超える時間外・休日労働が認められた事業場は、8,592事業場(違法な時間外労働があったものの74.1%)でした。【平成29年4月から平成30年3月までの監督指導結果のポイント】
(1)監督指導の実施事業場:25,676事業場
このうち、18,061事業場(全体の70.3%)で労働基準関係法令違反あり。(2)主な違反内容[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]
①違法な時間外労働があったもの:11,592事業場(45.1%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの:8,592事業場(74.1%)
うち、月100時間を超えるもの:5,960事業場(51.4%)
うち、月150時間を超えるもの:1,355事業場(11.7%)
うち、月200時間を超えるもの:264事業場(2.3%)②賃金不払残業があったもの:1,868事業場(7.3%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が月80時間を超えるもの:1,102事業場(59.0%)③過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:2,773事業場(10.8%)
(3)主な健康障害防止に係る指導の状況[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]
①過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの:20,986事業場(81.7%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が月80時間を超えるもの: 13,658事業場(65.1%)
②労働時間の把握が不適正なため指導したもの:4,499事業場(17.5%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が月80時間を超えるもの:1,878事業場(41.7%)※脳・心臓疾患の発症前1か月間におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いとの医学的知見があるため。
詳しくは下記参照先をご覧ください。
- 参照ホームページ [ 厚生労働省 ]
- https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00800.html
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2018.09.14
2019年4月から管理監督者の労働時間の把握が義務化されます
厚生労働省は、2019年4月から管理監督者(労基法41条2号)の労働時間を把握することを企業に義務付けます。一般の従業員と労働内容が実質的に変わらない管理職の過重労働を抑制する狙いです。これにより時間管理の対象となる管理職は全国で約144万人に上り、全労働者の約2%となると言われています。
管理監督者(以降、管理職)に関しては2008年頃のいわゆる「名ばかり管理職」の問題もあり、その扱いには厚労省も注意を払っていると言えます。管理職に過労死等が生じた場合は適切な勤怠管理が行われていたかだけでなく、そもそも労基法上の「管理職」に該当する実質を備えていたかも問われることになります。
■改正への経緯
働き方改革関連法案が可決され2019年4月から施行されます。これまでも懸案とされていた残業時間について原則月45時間、年360時間、労使間合意による拡大でも年6回の回数制限に加え月100時間、年720時間を上限とし違反の場合には罰則が適用されることになります。これにより一般従業員の労働が減少した分、管理職に回ることが懸念されています。労基法上の管理監督者(管理職)とは、労働条件の決定やその他の労務管理について経営者と一体的立場に立つ者のことをいいます。こうした従業員は、自ら労働時間について裁量権があり、地位に応じた相当の報酬を受けることになるため、労働時間の規制を及ぼすことが不適当と考えられています。したがって、管理監督者は法定労働時間や休日労働、割増賃金などの規制の適用を受けません。
管理職といっても実質、一般従業員と変わらない労働を行っている者も少なくなく、こういった管理職の過重労働を抑制するために管理職についても労働時間の把握が義務付けられることとなります。・労基法上の勤怠管理
企業は、労働者名簿、賃金台帳だけでなく、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類を3年間保存しなければなりません(労基法109条)が、厚生労働省は、この保存義務の対象に管理監督者も含めるよう労働安全衛生法の省令を改正します。この改正により、企業は管理監督者の労働時間を把握することが義務付けられることになります。・厚労省のガイドライン
厚生労働省作成の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では次のようになっています。(1)適用範囲
ガイドラインの適用対象は労基法の労働時間規制が適用されるすべての事業場で、労基法41条が適用される労働者、みなし労働時間制の労働者を除く全ての労働者となります。適用されない労働者についても適切な労働時間管理を行う責務があるとされています。(2)労働時間
ガイドラインでは労働時間についての考え方が明示されており、労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間で、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間も該当するとしています。業務に必要な準備や後始末、使用者の指示があれば即時に業務に従事しなくてはならない待機時間、業務上義務付けられた研修や教育訓練、使用者の指示による学習も労働時間に該当するとしています。(3)労働時間把握のための措置
従業員の労働時間把握のために原則として使用者が自ら現認して記録するか、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間記録など客観的な記録によって記録することが求められます。これらの方法によらず自己申告とする場合は本ガイドラインを踏まえて適切な時間把握を行うよう十分な説明と、客観的記録から実態と申告が乖離する場合は実態調査が義務付けられます。また労働時間を超えて事業場に残留している場合は理由等を確認し、使用者の指揮下にあると認められる場合には労働時間として扱う必要があります。2019年4月以降は、企業はこうした労働時間の把握を管理職に対しても実施していかなければなりません。来年4月に備え、現時点から管理職に関する勤怠管理等を見直しておくことが重要となります。
詳しくは、こちらをご覧ください。
参照ホームページ[厚生労働省]
https://www.mhlw.go.jp/content/000332869.pdf -
2018.08.17
平成30年7月豪雨の災害に伴う雇用調整助成金の追加特例について
厚生労働省では、平成30年7月豪雨の影響により事業活動が急激に縮小する事業所が生じ、地域経済への影響が見込まれるため、平成30年7月豪雨に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得ない事業主に対して平成30年7月17日に特例措置を講じています。今般、更なる特例を講じることとなりました。
雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的に休業等(休業及び教育訓練)又は出向を行い労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金などの一部を助成するものです。
【特例の対象となる事業主】
平成30年7月豪雨による災害に伴う「経済上の理由」により休業等を余儀なくされた事業所の事業主
(※平成30年7月豪雨による災害に伴う休業等であれば被災地以外の事業所でも利用可能です。)※平成30年7月豪雨の影響に伴う「経済上の理由」とは、例えば
・取引先の浸水被害等のため、原材料や商品等の取引ができない場合
・交通手段の途絶により、来客がない、従業員が出勤できない、物品の配送ができない場合
・電気・水道・ガス等の供給停止や通信の途絶により、営業ができない場合
・風評被害により、観光客が減少した場合
・事業所、設備等が損壊し、修理業者の手配や修理部品の調達が困難なため、早期の修復が不可能であることによる事業活動の阻害【特例の内容】
本特例は、休業等の初日が平成30年7月5日から平成31年1月4日までの間にある、上記特例の対象となる事業主に対して適用されます。①休業を実施した場合の助成率を引き上げる
(※岐阜、京都、兵庫、鳥取、島根、岡山、広島、山口、愛媛、高知、福岡の各府県内の事業所に限る)
【中小企業:2/3 から4/5 へ】【大企業:1/2 から2/3 へ】②支給限度日数を「1年間で100日」から「1年間で300日」に延長
(※岐阜、京都、兵庫、鳥取、島根、岡山、広島、山口、愛媛、高知、福岡の各府県内の事業所に限る)③新規学卒採用者など、雇用保険被保険者として継続して雇用された期間が6か月未満の労働者についても助成対象とする
④過去に雇用調整助成金を受給したことがある事業主であっても、
ア前回の支給対象期間の満了日から1年を経過していなくても助成対象とする
イ受給可能日数の計算において、過去の受給日数にかかわらず、今回の特例の対象となった休業等について新たに起算する(以下は既に実施している特例)
⑤生産指標の確認期間を3か月から1か月へ短縮する
⑥平成30年7月豪雨発生時に起業後1年未満の事業主についても助成対象とする
⑦最近3か月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象とする
詳しくは下記参照先をご覧ください。
- 参照ホームページ [ 厚生労働省]
- https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00570.html