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令和10年度中に週10時間以上の労働者まで適用拡大などの方向性を提示

投稿日時:2024年01月12日

厚生労働省から、「第188回 労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会」の資料が公表されました。議題は、「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)」と「雇用保険制度について」です。諮問が行われた改正省令案には、令和2年の雇用保険法等の改正により、令和7年4月1日から施行されることが決まっている高年齢雇用継続給付の給付率の縮小に関する詳細も含まれています。この改正省令案では、賃金の額がみなし賃金月額の64%から75%相当額未満となる場合について、みなし賃金月額に対する賃金の額の割合が逓増する程度に応じ、10%から一定の割合で逓減するように厚生労働省令で定める給付率を定めることとしています。

■高年齢雇用継続給付の概要参考
【給付金の種類】
①:高年齢雇用継続基本給付金
被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の労働者であって、60歳以後の各月に支払われる賃金
が原則として60歳時点の賃金額の75%未満となった状態で雇用を継続する高年齢者

②:高年齢再就職給付金
基本手当を受給した後、60歳以後に再就職して、再就職後の各月に支払われる賃金額が基本手当の基準となった
賃金日額を30倍した額の75%未満となった者で以下の要件を満たす者
a:基本手当についての被保険者であった期間が5年以上あること
b:再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上あること
c:安定した職業に就くことにより被保険者となったこと
(注)同一の再就職について、再就職手当と高年齢再就職給付金は併給されない。

【給付額】
60歳以後の各月の賃金の15%(令和7年度以降は10%)
※賃金と給付の合計額が60歳時点の賃金70.15%(令和7年度以降は70.4%)を超え75%未満の場合は逓減した率【下図参照】
※賃金と給付の合計が月額37万452円を超える場合、超える額を減額
賃金と給付の合計額【支給期間】
65歳に達するまでの期間
※高年齢再就職給付金は、基本手当の支給残日数200日以上は2年間、100日以上は1年間
支給期間
■雇用保険の適用拡大に関する検討の方向性(案)
【見直しの方向性(案)】
○:雇用労働者の中で働き方や生計維持の在り方の多様化が進展していることを踏まえ、従来適用対象とされてこなかった週所定労働時間20時間未満の労働者について、雇用保険の適用を拡大し、雇用のセーフティネットを拡げることとしてはどうか。

○:適用拡大の範囲については、給付と負担のバランスのほか、申請手続等を含む事業主の負担や被保険者の増加に伴う制度運営コスト等も踏まえ検討してはどうか。
※仮に週所定労働時間10時間以上まで適用拡大した場合は最大約500万人が、15時間以上まで適用拡大した場合は最大約300万人が新規適用となると見込まれる。

○:新たに適用拡大により被保険者となる層の給付は、平成19年に廃止された「短時間労働被保険者」のように別基準とするのではなく、現行の被保険者と同様とし、適用要件を満たした場合、失業等給付(基本手当等、教育訓練給付等)、育児休業給付、雇用保険二事業の対象としてはどうか。週所定20時間以上の被保険者と給付対象を同様のものとする以上、保険料率等についても同水準として設定することとしてはどうか。

○:現状、週所定20時間の労働者を基準に設定されている
①:被保険者期間の算定基準(※1)
②:失業認定基準(※2)
③:賃金日額の下限額、最低賃金日額(※3)
等については、適用拡大の範囲に対応したものとして見直すこととしてはどうか。

※1賃金の支払の基礎となった日数が11日以上又は賃金の支払の基礎となった労働時間数が80時間以上ある場合を1月とカウント
※21日4時間未満を失業日と認定
※3基本手当日額の算定基礎となる賃金日額の上下限については、毎年度の平均定期給与額(毎月勤労統計調査)の上昇率に応じて自動改定を行っているが、平成29年改正により、自動改定により変更した賃金日額の下限額が当年4月の最低賃金日額を下回る場合は、最低賃金日額を下限額とすることとなった。

○:複数就業者に対する雇用保険の適用については、現在試行中の65歳以上の者を対象とした本人申請方式による任意加入制度が、令和4年1月から施行されており、施行後5年を目処にその効果等を検証することとされていることを踏まえ、引き続き、検討することとしてはどうか。

<適用拡大の必要性等について>
○:週所定労働時間20時間未満に雇用保険の適用を拡大し、セーフティネットを拡げることに賛成。

○:雇用保険制度は労働時間や就労形態などにかかわらず、本来は全ての労働者に適用されるべきであることから、適用を拡大することに賛同。

○:働き方や生計維持が多様化しているということであれば、20時間未満の労働者について適用拡大を進めるという検討の方向性には違和感はない。

○:適用拡大は、中小企業の貴重な現場の担い手である短時間労働者が安心して働き続けられる環境の整備という点においては、意義がある。他方で、保険料負担の増加が見込まれる事業者、また、加入を望まない労働者への影響も考慮しなければならないのではないか。

○:一番大きな層が15~19時間のところであることから、15時間を挟むなど、段階を踏んで徐々に進めていく必要があるのではないか。

<給付内容について>
○:仕事を失うという場面だけではなく、教育訓練や育児休業についても雇用保険の被保険者として適切な保障を及ぼすことが重要ではないか。

○:多様な働き方を支えるセーフティネットの強化や、手続がシンプルになるといった点から現行の被保険者と同様の水準とすることに賛成。ただし、負担に敏感な中小企業から一定の反発が予想されるため、施行に向けた今後のロードマップなどを示す必要があるのではないか。

○:週所定労働時間数20時間の労働者を基準に設定されている基準や賃金日額の下限額などについて、雇用保険制度との整合性や被保険者間の公平性を考慮する必要があるのではないか。

○:適用拡大によって新たに被保険者になる者については、現行の被保険者よりも失業等給付の受給頻度が増える可能性が高い懸念もあるが、現行と同様の基準とし、制度が複雑にならないようにすることが望ましいのではないか。ただし、被保険者期間の算定基準や失業認定基準、賃金日額については、給付と負担のバランスを図る観点からの見直しは必要なのではないか。

<適用拡大の検討に当たっての留意事項>
○:適用拡大により就業時間を減らす労働者が増え、就業時間調整の新たな壁となることは避けるべきではないか。

○:適用拡大により、財政に問題がないのかもしっかり検証する必要があるのではないか。

○:施行に当たっては、短時間労働者の方が働きやすい環境づくりがまず重要。中小企業の景気回復や、大企業との格差是正といった適用拡大の機運の醸成が今後の問題になってくるのではないか。

○:複数就業者のうち、適用拡大によって新たに本業・副業がどちらも適用対象となる者も一定数いることが想定される。現在は主たる賃金を受ける1つの雇用関係についてのみ被保険者となるが、生活を維持するために副業している者も少なくないということを踏まえれば、本業以外では雇用保険加入資格がないという現在の取扱い自体が雇用保険の制度趣旨からして問題ではないか。

○:2以上の雇用を合算することで既定の週所定労働時間数を超える場合、現在は65歳以上であればマルチジョブホルダー制度で適用対象となる。離転職や将来に不安を感じてマルチジョブホルダー制度で雇用保険に加入した方も一定数存在しているが、対象者数が少ないことを踏まえれば、対象を65歳以外にも拡充して対象者数を増やすべきではないか。

○:適用拡大した際に、現在の対象者や複数就業の労働時間数のパターンごとにどのような影響が想定されるかを整理し、いわゆる部分失業などの失業の定義の見直しを含めた丁寧な検討が必要ではないか。

○:暫定任意適用事業について、農林水産業において暫定任意適用事業を含む1~4人の企業に雇用されている労働者は、雇用者の25%を占めており、また、現状も多くの事業者が申請をしており一定のニーズも想定される。セーフティネット拡大の観点や雇用者数で区別する妥当性の観点から、暫定任意適用事業の撤廃を含めて検討を行うべきではないか。

○:求職者支援制度も雇用のセーフティネットとして重要な役割を担っているところ、雇用保険の適用拡大により、雇用保険の被保険者となる者が当然に求職者支援制度から外れると、支援から抜け落ちてしまう人々が生じる。将来的には雇用保険制度でカバーできる問題なのかもしれないが、少なくとも過渡期においては求職者支援制度を適用ないし準用する必要があるのではないか。

■失業保険制度の主な考え方
■失業保険制度の主な考え方また、「雇用保険制度について」では、雇用保険の適用拡大だけでなく、育児休業給付等、教育訓練給付等について、これまでの議論の整理及び具体的な制度設計(案)が提示されています。

「雇用保険の適用拡大」については、見直しの時期も含めて、「雇用労働者の中で働き方や生計維持の在り方の多様化が進展していることを踏まえ、従来適用対象とされてこなかった週所定労働時間20時間未満の労働者について、雇用保険の適用を拡大し、雇用のセーフティネットを拡げる。」、「具体的には、給付と負担のバランスのほか、申請手続等を含む事業主の負担等制度運営上のコストも踏まえ、2028年度(令和10年度)中に週所定労働時間10時間以上の労働者まで適用範囲を拡大する。」、のように示されたことが注目されています。

「育児休業給付等」などについても、重要な方向性が示されていますので、それも含め、詳しくは、こちらをご覧ください。

・これまでの議論の整理及び具体的な制度設計案(雇用保険の適用拡大)
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001177125.pdf

・これまでの議論の整理及び具体的な制度設計案(育児休業給付等)
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001177126.pdf

・これまでの議論の整理及び具体的な制度設計案(教育訓練給付等)
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001177127.pdf

・高年齢雇用継続給付について
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001177128.pdf

詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ [ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36697.html