群馬県高崎市の社会保険労務士事務所です。介護事業所支援(指定申請等)、助成金申請、就業規則、人事考課、労働基準監査署対応、メンタルヘルスなど幅広くサポートいたします。

精神障害の労災認定基準-パワハラ防止対策の法制化を受けた見直し

投稿日時:2020年06月26日

厚生労働省から、令和2年5月11日に開催された「第5回 精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の資料が公表されています。同検討会では、令和2年6月よりパワーハラスメント防止対策が法制化されることから、心理的負荷評価表の見直しについての検討を重ねてきましたが、今回の検討会の資料として、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」が提示されています。

この報告書では具体的出来事等へのパワーハラスメントの追加などについて、次のような方向性が示されています。

■業務による心理的負荷評価表に係る具体的出来事等への追加
●パワーハラスメントを受けたことによる心理的負荷の強度等については、現行では、対人関係の類型の一つである「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の具体的出来事に当てはめて評価しているが、今般、職場におけるパワーハラスメントの定義が法律上規定されたことを踏まえ、心理的負荷評価表の具体的出来事として、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」を追加することが適当である。

●「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」の具体的出来事を新設した場合であっても、例えば、優越性のない同僚間の暴行や嫌がらせ、いじめなどは、「パワーハラスメント」に該当しないことになるため、これらについては、引き続き、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の具体的出来事で評価する必要がある。

なお、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」という出来事について、心理的負荷の強度の具体例については、次のように示すことが適当とされています。

●心理的負荷が「強」となる具体例
○上司等から治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合
○上司等から暴行等の身体的攻撃を執拗に受けた場合
○上司等による次のような精神的攻撃が執拗に行われた場合
・人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃
・必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃
・上司等から心理的負荷としては「中」程度の身体的攻撃・精神的攻撃を受けた場合であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合

●心理的負荷の強度が、「中」又は「弱」となる具体例
○上司等による次のような身体的攻撃・精神的攻撃が行われ、行為が反復・継続していない場合
・治療を要さない程度の暴行による身体的攻撃
・人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃
・必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃

○上司等による「中」に至らない程度の身体的攻撃・精神的攻撃が行われた場合

今回の検討は、パワーハラスメントに係る出来事に関して、現行の認定基準を前提として、心理的負荷評価表の出来事の追加・修正等を検討したものですが、精神医療の分野の研究も日々進んでおり、また、社会・経済状況の変化が著しい昨今においては、労災認定の基準等に関して今後も適宜検討していくことが重要であると考えられています。

コロナ禍の中、労働環境の急激な変化で、誰もが強いストレスを抱えていることでしょう。こういった状況ではハラスメントも起こりやすいと考慮し、注意喚起を図っていきましょう。

詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ [ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11184.html